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その後、〝雨音アプリ〟を開いてみた。
そこには、見たこともないような大きな雨粒が映し出されている。いや、もはや直線的な水流が、いくつも線をなしているのが見える。
雨音らしきものとともに、何かが聴こえる。よく耳をすませると、サイレンのような音がする。そして、人の悲鳴のようなものまでが聴こえるではないか。
明日の夜は大変なことが起きるかもしれない。家の近くの河川堤防が決壊でもするのか?
※
次の朝も大雨が続いている。
「あなた、心配だわ」悠里が言った。
「分かっている、気をつけて行って来る」私は答えた。
「この大雨もだけど、あなたの身体が心配なのよ。このところずっと残業で無理をしているから」と悠里が続けた。
「今日はなるべく早く帰るつもりだ。このプロジェクトに片がついたらまとまった休みが取れる」私は答えた。
「この雨は災害級になるかもしれない。今夜は、何か大変なことが起きるかもしれない」そう言って駅へ急いだ。
※
会社へ着くなり、どうしても昨夜の〝雨音アプリ〟のことが気になった。自宅を管轄する市役所の、土木部に勤める友人へ電話をした。
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