雨音アプリ

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「先日来の大雨で河川堤防は大丈夫なのか?」 と私はきいた。 「市役所の方でもパトロールを強化している」と友人は答えた。 「このところ、やけに堤防が気になるのだが」と私が食い下がった。 「分かったよ、そこまで言うなら、今日はおまえの家の近くの堤防を念入りに調査する。先ほども同じことを心配する電話が市に寄せられたからな」と約束してくれた。  午後、市役所の友人からメールが入った。今日のパトロールで、堤防の亀裂が見つかり早急に応急措置をしたと言う。  放っておけばこの大雨で大災害を引き起こしたかもしれないと大いに慌てた様子の文面だった。  やはり、〝雨音アプリ〟は本物だったのか。  帰宅し妻の悠里に堤防のことを伝えた。  今夜は幸いにも、大変なことは起こらないようだ。  夕食後、シャワーを浴びているうちに気分が悪くなり目の前が真っ暗になった。意識が遠退いていくのが分かった。私はそのまま倒れた。           ※ 「目が覚めたようね、優一さん。大丈夫?」悠里が言う。  どうやら私は今、病院のベッドで横になっているようだ。点滴が腕に取りついている。 〝いったい自分は、どうしたのだ?〟
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