雨音アプリ

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 そうか昨夜、シャワーを浴びている時に、倒れてしまったのだ。  弾みで、何かをひっくり返して大きな音を立てた。悠里が驚いて駆け込んで来て、悲鳴をあげた。  直ぐに救急車が呼ばれて病院へ運ばれたのだ。  窓からはレースのカーテン越しに薄日が差し込んでいる。雨は上がったみたいだ。  そして今、体調も回復しつつある。  今思えば一昨日の〝雨音アプリ〟で聴こえたのは、昨夜の浴室の場面だったのではないか・・・。 「先生はすぐに発見されたので後遺症は残らないだろうとおっしゃったわ」悠里がほっとしたように言う。  このところ無理が重なった。仕事も大切だが、このままでは、もっと大切なものを失ってしまうような気がした。  大勢の人が喜び、そしてある時は逃げ場ともなりうる都市空間を建設していたはずなのに、自分の逃げ場はつくってこなかったのか。  早々に、休暇を取り、久々に悠里と旅にでも出よう。           ※  〝あの雨音アプリ、本当に役に立ったわ。使用する時は、屋外だけでなく、念のために屋内でも使ってみるべきよね。注意事項に、屋内では近くの水音を拾う恐れがありますと書いてあったから〟 〝優一さんには、やっぱり私がいないとダメよね〟悠里は自分のスマホに感謝した。                (完)
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