「イジメ」は犯罪者をまもる隠語

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時は無常なもので、出鶴を不安で()み込む2学期が始まった。(カク)(トオ)せないのは頭で理解しても、心は追いつかないまま…羽音の話に相槌(アイヅチ)を入れながら歩き、校門をくぐる。 ――上靴は洗って持って来たから、今日は大丈夫。()()えて…下駄箱(ゲタバコ)の中が荒れてるのに気付き、急いで外靴を上靴入れにしまった。 羽音は職員室に寄ってから教室に行く。 先に行く出鶴は、少し急いで教室に入り、自分の席周りや机の中を確認する。机上の一輪挿(イチリンザ)しをスッと持ち、トイレで水を捨て 花をゴミ箱に棄てる。まるでいつもの日課をこなすように 表情を変えず淡々(タンタン)と片付ける。最後には何も無かったように席に座っている。 始業のチャイムが鳴る頃、担任と羽音が教室に入ってきた。 担任からの説明のあと、羽音は物怖(モノオ)じしない性格で、明るく自己紹介をした。新しい学校での生活が楽しみなのが伝わってくる。 いつもの3人がニヤニヤしながら此方(コチラ)を見る視線に、出鶴の不安は大きさを()した。 羽音の席は、後方の、出鶴と1つ空けて隣になった。指示された席へと歩く羽音に笑いかけられた出鶴は、強張(コワバ)る顔で微笑(ホホエ)み返した。 チャイムが鳴り、3人のうちの1人は 担任が出て行くのと同時に 羽音の前に駆け寄った。 教室内は次の準備などで ざわついていて、羽音が何を言われてるのかは 出鶴には聞こえない。そこに1人が加わり。更にもう1人…少し背の高い生徒が近づくと、先にいた2人が左右に()けた。 出鶴はモヤモヤしながらも、初日から何もしないだろうと、準備を始めた。手を動かしながら…自分の悪い話を吹き込もうとしてるんじゃないかと想像した。 ――ああ、そうか。 出鶴は悲しい絶望(ゼツボウ)の中で、安堵(アンド)した。 ――羽音もあっち側に取り込まれる。そうしたら、羽音のことは安心なんだ。あとは自分のことだけ。今までと変わりない。
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