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出鶴が重く長く感じる一週間が終わり、週が明けた水曜日。
教室に戻り、午後の始業に合わせて羽音が席に着いたのを いつもの3人が見ている。窓辺の席の机に1人が座り、2人が囲んでいる。相変わらずニヤニヤしているが、1人は目付きが鋭くなっている…何かされる、と出鶴は察した。胸が苦しくなる想いに耐えながら席に着いた。
1人が立ち上り、羽音の前に立った。
目線1つ動かない羽音の姿は、怯えてるように見えない。これから起こる“何か”を待っているようにさえ見える。
2人はニヤつき、教室内はざわつき始めた。
立ちはだかった生徒の手には、水の入った掃除バケツがあり…それを羽音の頭上からひっくり返した。
生徒達が騒ぎ、女子の悲鳴まで混じる中、それらに掻き消されかけた出鶴の声がした。
「羽音!!」
ガタッと椅子が倒れる勢いで出鶴は立ち、両手を机についている。
羽音は右の掌を出鶴に向けて「来ないで!…アタシの問題だから。」と言い、左腕を伸ばして 足元に転がされたバケツを拾った。
立ち上がり、静かな声で「アタシがカタつける。」と言い、教室を出て行った。
出鶴は 羽音を巻き込んだことを後悔し、自分を責めた。
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