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先程 水をかけた生徒の前に立った羽音は、右手を高く上げ、素早く降ろした。握っていた牛乳パックが 机上でベシャッ!と音を立てると同時に、バシャー!!と牛乳が飛び散った。席が近い生徒は災難である、わー!キャー!と逃げる騒動になった。
目の前で牛乳パックをぶつけられた生徒は呆然と座っている。羽音は割れたパックを避けながら 乾いた雑巾で机を拭いた。牛乳をたっぷり吸わせた雑巾を洗って絞り、素早く持ち上げたバケツを生徒の頭上でひっくり返した。生徒の足元に空のバケツを置くと、
羽音は自分の席に付き、少し声を張った。「先生、終わりました。授業を始められます。」
それを聞いた生徒達は、逃げていた子も素早く着席し、全員が背筋を伸ばし座り直した。
牛乳にまみれた生徒は、微かに震えている。真夏の晴天の午後の牛乳臭い水、寒くないのだけはわかる。恐怖か、怒りのどちらかだ。
その震える後ろ姿を、出鶴は無心で見つめた。考えないようにしたのだ、始まった授業に集中するために。
遣り合った2人は 授業が終わるまで教室を出ようとしなかった。
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