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琴葉はもう恥ずかしいと言う気持ちが全く吹っ飛んで、気持ちが落ち着いてくるとリラックスして余裕が出て来た。
里深がそうさせてくれるんだと分かった。
「でも遊馬が気になるなら、もう少しアピールしないとね」
里深の口から遊馬の名前が出て琴葉はドキッとする。
「そう、ですよね。結衣にもそれは言われていて」
それは自信が全く無い。
どう自分の気持ちをアピールして良いのか全く分からない。
だから今日遊馬のバイト先に行って、遊馬が居なかったことに少しだけホッとした自分もいた。
「まぁ、ことちゃんはまだ遊馬が気になるだけだし、そんなに深刻になったり身構えなくても良いと思うよ」
琴葉が思い詰めているように見えて、里深は琴葉の肩の力が抜ける様に助言する。
「黒部さんは、恋愛ってどうですか?」
琴葉は里深の言葉を聞きながら、男性サイドの恋愛も聞きたいと思った。
同性の恋愛話は聞けても、異性の恋愛観は分からない。
「聞いちゃう?」
「聞きたいです!」
琴葉が前のめりになるので、里深はクスッと笑う。
「そうだな……。うーん」
どの程度まで話せば良いかと里深は考える。
琴葉の様なピュアな女性は、正直里深の恋人達にはいなかった。
そう言った女性は、恋愛の対象外でもあった。
「今までは、何となく恋愛してきたかな。好きって気持ちは勿論あったけど、この子じゃなきゃ絶対ダメって事もなかったから別れたんだろうし」
中学から現在までを思い出しながら里深は琴葉に話す。
琴葉は、里深の恋愛に正直興味はあったが理解が追い付かない。
「何となくの恋愛って、私には高尚すぎます」
琴葉の反応に、里深はフッと笑う。
「でも、大人になってくると、恋愛に慎重になってきたかな」
正直な気持ちだった。
もう遊びで恋愛できる環境でも無いし、正直そんな関係にも疲れていた。
「黒部さんて、本当はとても真面目なんですね」
里深の心情を汲み取れない琴葉は、里深の言葉をそのまま素直に受け止める。
琴葉の表情を見ながら、本当にピュアだなと里深は思った。
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