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「真面目って言うか、これから先を考えると、フラフラもしれられないんだよね」
里深の声のトーンに、琴葉は里深の表情を見た。
何となく、辛そうに見える。
「俺、一人っ子でさ。その分、親の期待も大きくて。変な話、将来は家の為に結婚しろ、って感じ。見合い写真とか凄くてね。今時、時代錯誤でしょ」
自虐的に里深は笑う。
でも琴葉は、里深が日本でも有数の大企業の御曹司だと芽衣子から聞いていたので、家の為の結婚と聞いても驚かなかった。
「黒部さんのお家が武蔵グループだって聞いたことあります」
「あ、そうだったんだ」
まさか知られているとは思わず、里深はドキリとした。
「格式とか、家柄とか、やっぱりそれなりの相手が求められるんですね」
同情では無いが、自由が無いのは悲しいなと琴葉は思う。
「どうなのかなー。父親は俺を自分の思い通りにさせたいだけだと思うよ」
親子関係が特に悪いわけでは無いが、同じ男の父親には反発心が里深にもある。
「そうなのかなぁ。黒部さんの事を思ってのことだと思うけどなぁ」
「俺の事を、あの父親がねー」
里深は父親を思い浮かべて、ナイナイと思いながら笑う。
「だって、親は子供の心配をするし、幸せになって欲しいって1番に思ってると思いますよ」
琴葉は本当に大切に育てられているんだなと里深は思う。
「でも、実際うちは違うな。俺を思っているなら、見合い写真を山のようには持ってこないよ。俺が選んだ人を許してくれるはずだし」
「だから、黒部さんが本当に好きになった人を紹介すれば、ご両親は賛成してくれると思います」
純粋すぎる琴葉が里深は心配になってきた。
遊馬なら安心だが、遊馬以外の男と付き合って傷つくことがあったらと、まるで父親の様な感情が芽生え始めた。
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