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カフェを出て、琴葉と里深は駅に向かって並んで歩き始めた。
「すみません。ご馳走になってしまって。ありがとうございました」
「いえいえ。それより、遊馬となら理想の恋愛出来そう?」
里深はさっきの会話を思い出し、つい口から出てしまった。
琴葉はドキッとして遊馬を思い浮かべる。
「んー。どうでしょうね。まずは私を視界に入れてもらわないと」
いくら琴葉が遊馬を気になっていても、遊馬の態度は全く読めていない。
「あはは。スイーツ馬鹿だからねー」
「本当にそれです。藤下君って不思議な人です。自分の世界があって、でも人に対しても優しくて。だから気になったのかも」
琴葉が遊馬を良く見てるなと里深は思った。
気になる存在なのだから、それが当たり前なのかと自分に言い聞かせる。
「でも、モヤモヤしてます。藤下君のこと、気になってるのに、失恋するのが怖くて、前に進めなくて」
失恋したことで、人を好きになって、傷付くことに琴葉はまだ恐れがある。
今以上の気持ちになって、好きになるのが怖くなっていた。
「だから、もう少しだけ、この気持ちが前に向けたら、好きだって確信したら告白できそうです」
里深は何も言わず、腕を伸ばすと琴葉の頭を軽くポンポンする。
琴葉はびっくりして里深の顔を見上げた。
「外野は黙って見守ってるよ。辛くなったら相談にも乗るし」
琴葉の一途な気持ちが見えて、里深は優しい気持ちになる。
17年の拗らせた恋愛を、遊馬とうまく行くことで琴葉の心が癒えればと本心で思う。
「ありがとうございます」
里深の優しさが伝わって、琴葉はとびっきりの笑顔で微笑んだ。
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