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『で、話を戻すと、ことちゃんが遊馬と会えなかったのが寂しそうでさ』
『仕方ないですよ。大学も違うし、今は知り合いレベルなんですから』
『うん。それでね、お節介かなと思ったんだけど、良かったらみんなで旅行に行かない?ことちゃんと遊馬がもっと親しくなれればと思って』
里深が思い付いたのはその事だった。
『旅行?』
予想外の誘いに結衣はびっくりする。
『うちの父親の会社が、提携してるリゾートホテルが有るんだけど。そこなら気兼ねなく使えるかなって』
流石だと、結衣はまたまたびっくり。
『でも、男と旅行はまずいなら断ってくれて良いよ』
結衣が無言になったので、里深はマズかったかと、結衣が断りやすい様に話を持っていく。
『いえ、是非、場所を提供してください!黒部さんの事を信じてますからッ!』
相談の内容が分かり、これは琴葉の為にも断れないと結衣は食い気味になる。
とにかくきっかけを作らなければ、いつまでも琴葉と遊馬は進展しないと思った。
『少しは警戒してくれても良いけど?』
あまりにも、結衣があっさりOKを出したのでわざと里深は言ってみる。
『全くないです!黒部さんレベルの人が、私やことに何か悪巧みする様に思えないですから』
結衣は本気でそう思っていた。
『誘っておいてなんだけど、そうキッパリ言い切られるのも男としては少し複雑だな。それに俺レベルって』
信用してくれるのは嬉しいが、そんなに紳士でもないけどと里深は笑う。
『黒部さんはやっぱり、中々いないレベルの男性ですよ。黒部さんが本気出せば、手に入らないものはないだろうし』
里深の欠点が全く見えない結衣はキッパリ言い切る。
『えーと、褒め言葉として、ありがたく受け止めさせていただきます。でもどうかな。俺だって無理なものはあるよ』
実際、手に入らないものだって有るのだから、と里深は何故か琴葉を思い浮かべた。
『うーん。そうですよね。全てが万能ではないですよね。でも、黒部さんの事は、私もことも信用してるし、大切にお付き合いしたいって思ってますよ』
『もちろん俺もそうだよ!結衣ちゃんの事も、ことちゃんも大切な友人だからね』
本音で里深もそう思っている。
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