楽しい旅行は危険がいっぱいのドキドキ展開

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「よッ」 バイトが終わった遊馬の前に、里深が現れた。 「すみません、待ちましたか?」 遊馬は里深に近付く。 「そんなには待ってないよ。行くか」 「はい」 里深と遊馬は並んで、駅の近くの居酒屋へと入った。 遊馬は里深から話があると、バイト終わりに飲みに行こうと誘われたのだった。 「今日はどうしたんですか?」 遊馬は飲みに誘われた事を里深に尋ねた。 もしかして、琴葉との事かと少しだけ脳裏によぎる。 「夏休み中に、みんなで旅行に行かないかなと思ってさ」 旅行と聞いて、一体みんなとは誰を指しているのかと思った。 「みんなって、どのメンバーですか?」 「ことちゃんと結衣ちゃんだけど?」 「え?」 遊馬は琴葉と里深が付き合い始めたと思い込んでいるので、行くなら2人で行けば良いのにと思ってしまった。 「え?って?」 遊馬の反応に里深は困惑して笑う。 「あー、えーと。黒部さん、生野さんと2人で行った方が良いのでは?」 「え?」 今度は里深が驚く。 「あ、あれ?」 里深の反応に、遊馬は変な事を言ってしまったかと焦る。 しばし2人は無言になってしまった。 「……なんか、勘違いされてる?」 先日の水族館に行った事が、遊馬にバレたのかとやっと里深は理解した。 「勘違いですか?」 「うん」 里深がきっぱり否定するので、話が食い違ってると遊馬も気が付く。 「2人があの店でデートしていたと聞いて、生野さんと付き合い始めたんだと思ってました」 やっぱり勘違いかと里深は苦笑いをする。 「確かにことちゃんと、あそこで偶然会ってその後一緒に出たけど、俺達は別に付き合い始めた訳じゃないよ」 誤解されても仕方なかったし、琴葉と2人で水族館に行った事が遊馬にバレても、里深はやましい気持も一切なかった。 ただ、もう付き合ってるまで遊馬が考えると思ったのは誤算だった。 水族館に行った事は伏せた方が良いかと思った。 「そうですか。余計な気を遣ってすみませんでした」 遊馬は本当に申し訳ないと思い、深々と頭を下げる。 「いやいや、謝ることないっしょ」 遊馬の態度に、里深は琴葉と水族館へ行った事に少しだけ罪悪感を持った。
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