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Day1. 黄昏
世界の始まりは朝焼けだったらしい。明暗すら定かではない世界へ差し込まれた一本の鉾、その鉾によってかき寄せられた塩の山、それと一緒に生まれた昼と夜の境界。
「なら、世界の終わりは夕焼けなのかな」
柵の手前で君は言う。柵の向こうには海があった。海だ。地面の代わりに水面が広がっている。地面よりも柔らかなそれは、風だけとは思えない大きな力に従って僕達の方へといくつもの白波を何度も寄せてくる。その向こうに山吹色の太陽がいた。海を従え僕達に対峙するように、白波を従えた太陽がいた。
白波は未だ僕達のところまでは届かない。けれど僕達はいつか、この白波に到達される、そんな気がする。
「そうかもね」
僕は答えた。海を眺めながら繰り返し押し寄せる白波の白い牙を待つ君へ、風になびく黒髪を敵の色に輝かせている君へ、答えた。
「悪くないんじゃない」
広大な海をも染める強大な黄金色。それを受けながらも海の一部にはならない君。
これが世界の終わりだというのなら、僕は嬉しいとさえ思っている。
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20220701
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