3人が本棚に入れています
本棚に追加
Day14. 幽暗
長き日の終わりに月上りて、夕闇、澄みたる青のおもむろに光失わるる様を、薄らとすがめに見遣りつつ、「かくや暗き夜の訪れは、雨音迫り来る川辺の如し」と面を伏せつ。御方「光失せにし空の末、げに花の散りゆくかな」とのたまうを、面上げ、見上ぐるに、かえって空の片端の朱に染まりくる様あり。「花よ」とのたまいしそのまなこの夕暮れの空を映したるを、浮き立ちて、目離し、「まこと花なり」とのみ言いけり。
――或る女房の日記より
-----
20220714
最初のコメントを投稿しよう!