Day22. メッセージ

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Day22. メッセージ

 誰かへお手紙を書きたくなったので、わたしはあなたへこれを書くことにしました。あなたはわたしを覚えていますか? そもそも知っているでしょうか。わたしはあなたのことをよく知っています。そのつもりです。  あなたは昔から頑固で、筋が通らない話は嫌がりましたね。癇癪持ちで、ちょっとでも苛立ったら喚き立てる、そんな子でした。今は喚くほどの元気はないけれど、一度気に入らないと思ったらとことん嫌うという愚直で面倒なところは何一つ変わっていません。それを表に出さないよう努めるようになったのは成長というものでしょうか。ちなみにあなたの世話焼きなところは今も全く変わっていませんよ。世話焼きで目立ちたがり、的を得た発言をしたがるけれど理解力はほどほど。そのくせ注目を浴びるのは格好が悪くて嫌。あまのじゃくですね。  そういえば、あなたは「大人になりたくない」と言っていましたね。大人になったら見えるものが見えなくなるから。神様も幽霊も感じられなくなるから。筋の通った人間などいないという現実に気付いてしまうから。実際、そうでした。それどころかあなたはとことん平凡なのに関わらず、周囲と比べると頭が良いと判断されるようになります。実際の自分と周囲の評価が異なるのは良きにしろ悪きにしろ難しくなりますね。今のあなたはあなたの理想通り、周囲に馴染む良き人間として立ち回ることを楽しんでいますから、後になって周囲の期待に自分を合わせることができなくなって泣き喚くことが多々あります。あまのじゃくで世話焼きで目立ちたがりで不器用、あなたはやはり面倒な人です。  おや、これではあなたを評価しただけの手紙ですね。では最後はあなたを褒める言葉を……と思ったのですが、やはりわたしはあまのじゃくですから、あなたを素直に褒めることなどできようもありません。他人ならいざ知らず、あなたが対象となるとお得意の世話焼きもする気になりません。  ですから、一言だけ。  こんなわたしですが、どうか今後もお付き合いくださいね。  わたしへ。  わたしより。 ----- 20220724
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