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 すると輝希は不服そうに顔をしかめた。 「は? 好きとか嫌いとかじゃなくて、兄妹だからだろ。しかも双子で、片割れだし」 「いやいや、二卵性だから片割れではないよ?」 「うるせぇな。別にどっちでもいいだろ」  輝希は(おもむ)ろに立ち上がってキッチンへ向かった。冷凍庫を開けて何かを物色している。  私には分からない。例えば立場が逆だった場合、私は輝希のように復讐をしようなどと企てただろうか。いや、いくら双子だからってそこまでしないと思う。輝希は私を片割れだと言った。血を分け合っているという点では、確かに片割れかもしれない。そんな私が傷つけられると輝希も痛いのだろう。やられたらやり返す兄だ。ちょっと理解できないけど。 「ん」 「ぎゃっ!」  頬になにやら冷たいものを当てられた。潰れたカエルみたいな声が出る。見るとアイスだった。 「たまにはガリガリ君以外も食べれば?」  輝希が口にぶら下げていたのは、コーヒー味のパピコだった。私の手にも同じものがあり、どうやら片方をくれたらしい。私はシャリシャリ系が好きなので、文句はない。指を引っ掻けてパカ、と開ける。上蓋に残った方をチューチュー吸い上げて、ふと違和感を覚えた。パピコにではない。輝希にだ。  奴が片割れのパピコを「ん」と素直にくれるはずがない。当の本人は背中を向けてリビングから出て行こうとしている。ちょっと待てこら。  急いで冷蔵庫の中を確認した。うわ、やっぱり! 「ちょっと輝希! 私のプリン食べたな!?」 「あぁ、美味(うま)かったよ。それ、お礼のパピコ」 「はぁ? ふざけないでよ。楽しみにしてたプリンだったのに! 返せ」 「知るか。名前書いとけ。っていうか、本来なら咲希が俺に差し出すもんじゃね? 礼は言われても文句言われる筋合いないけど」 「うるさい、それとこれとは話が別なの!」  ギャーギャー言い合いながら、私は思った。双子だけど、輝希とは一生分かり合えない、と。 END.
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