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「あー、すいません。俺の彼女に何か用ですか」
遠慮がちに私と金髪の間にひとりの男子高校生が入ってきた。背丈は155センチの私と同じくらいで低く、体の線も細い。後姿だけだと女の子に間違われそうだけど、半袖から伸びる腕は申し訳程度に筋肉が見えるので、ちゃんと男の子だった。
「ちぇ、なんだ、彼氏いたんだ」
3人は彼氏持ちには用は無いのか、拍子抜けするくらいあっさりと引いた。大乱闘が起こるのではないかと危惧していたが、杞憂だったようだ。私たちの前から姿を消した。
ちなみに私に彼氏などいない。漫画みたいな助け方をしてくれた行動イケメンとこれから恋に落ちる、なんて夢も見ていない。後姿どころか影だけで分かるコイツの正体は。
「なにナンパされてんだバカ」
「知らないよ。あっちが勝手にナンパしてきたんじゃん。でも助かったわ。ありがと、輝希」
「つーか双子なのにバレないってのがウケるよな。まぁ俺たち似てないし、無理もないか」
そう、彼は私の双子の兄だった。双子といっても俗に言う二卵性双生児で、背丈は似ているが顔はあまり似ていない。輝希は母親似で私は父親似。男女の双子というのもあるのだろうが、双子っぽいね、などと言われたことはあまりなかった。
「おい、食わないならもらうぞ」
あと一口まで溶けてしまったガリガリ君を見かねた輝希は、私の手ごと食べるくらいの大口を開けて食らいついた。これが好きな人だったら卒倒する行動だが、相手が双子の兄(しかも数分早く生まれただけ)だから苛立ちしか湧いてこない。
「あーっ! 私のガリガリ君がっ!」
「うるさ。しかもハズレだし。また買えば?」
手に残ったのは綺麗に舐めとられた木の棒のみで、そこには何も書いていなかった。うわ最悪。最後の一口を取られた挙句、あたりかハズレかまで先に見られるなんて。しかも周りからは「まぁ仲の良いカップルだこと」みたいな温かい目で見られるし。ただでさえ暑いのに怒りで沸騰寸前だ。
私はグーパンチで輝希の背中を殴り、「痛ってーな! この怪力ゴリラ女!」という暴言を無視して早歩きで帰路についた。
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