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 翌日。岩本さんの机の周りには女子たちが群がっていた。 「愛佳おめでとー!」 「やっと実ったんだね!」 「彼氏とか羨ましぃ!」  当の本人は澄まし顔で「まぁね。長年片想いを続けてきた甲斐があったわ」と、短いショートボブの髪をシャンプーのCM如くサッとなびかせる。  結局私はモヤモヤしたまま朝を迎えた。正直あんまり眠れていない。輝希とも会話を交わさないままお互いの部活動の朝練に出たので、詳しい話は聞けていなかった。双子なのに何を考えているのかサッパリ分からない。 「…………」  あまりにも岩本さんを凝視しすぎたのか、目が合った。げ、睨まれる……と思ったが、彼女は立ち上がってこちらにやって来た。え、なに、怖いんですけど。 「おはよう、木下さん」 「お、おはよ……」 「輝希君から聞いた?」 「あ、うん、付き合うことになったって……」 「そうなの。今までごめんね。これからもよろしく」  岩本さんは一方的にそう言って自席に戻っていった。私はキツネにつままれた気分だった。  あの岩本さんが謝ったぞ。『よろしく』なんて微塵も思っちゃいないんだろうけど、今まで見たことのないほど穏やかな笑みで、逆に何か企んでるんじゃないかと勘繰ってしまう。  ……いや、でも、もう私に意地悪なことをしないということか。それならそれでいいか。色々腑に落ちないことはあるけれど、平穏な高校生活が送れるのならこの上ない幸福だ。輝希も好きな人と結ばれたのなら幸せだろう。もうこれ以上詮索するのはやめよう。 「咲希、おはよ」  軽く頭を振ると、友人が登校してきた。「おはよ」と挨拶を返し、「昨日のお笑い番組見た?」と話題を振られたので、2人のことは頭から追い出した。
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