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「俺、知ってた。岩本が中学の時から俺を好きで、さらには妹の咲希に嫌がらせしてることも」
輝希の眼光は鋭かった。「もう誤魔化せないぞ」と目で訴えてくる。私は目の逸らし方が分からず、うんともすんとも言わないで、ただ輝希の目を見ていた。
「そういうの許せないんだよな。恋愛に咲希関係ないじゃん。だから、地獄に落としてやろうと思って」
え。なにやら物騒な話になってきた。眉をひそめるが、輝希は表情を変えないまま続ける。
「俺のこと好きなら恋人になるフリをして近付こうと思って、体育館裏に呼び出して告白した。そりゃ好きな奴から告白されたら二つ返事でOK出すよな。最初のうちは恋人気分を味わわせといて、一気に奈落の底へ落としてやった」
ほくそ笑むので、私の背中に冷や汗が伝った。クーラーの設定温度は26度なはずなのに、私のところだけ18度くらいに設定されているかのように寒い。私は自然と「なにしたの?」と聞いていた。
「別に過激なことはしてない。上履き隠したり、教科書破ったり? 咲希がやられてたことをそのままやった。最後は正体明かして『これ以上咲希に近付いたらどうなるか分かってるな?』って壁ドンした」
開いた口が塞がらなかった。俺いいことしたでしょ? とでも言いたげな澄まし顔で私を見ている。いやいやいやいや。普通に怖い。え、つまりは、私の為に好きでもない人に告白して彼氏のフリをし、油断したところで私がやられたことをやり返したってこと? 岩本さんからしたら、ずっと片想いしてた人から告白されて恋人同士になって、幸せ絶頂! ってところにミサイルをぶち込まれたみたいなもん? でもそれは自分がやってきたことだから、自業自得といえば簡単だけど、気の毒といえば気の毒だ。
「3人同じ高校に入ったらやるって決めてたことだから、俺的には夢が叶ってハッピーかな」
「……輝希、私のこと好きすぎない?」
私の代わりに復讐するために同じ高校を選んだなんて、そんな理由普通ある?
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