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手術前⑷
二度目の自己血貯血。
本来なら余裕のよっちゃん(←めっちゃ死語)のはずなのですが、約十五分後、悲劇は起きた。
て、大げさな。
その日は、採血する患者さんが多く、『花野さん、申し訳ないけど採血を終えたら、ベッドからリクライニングチェアの方に移動してくださいね』と、採血室の看護師さんから言われていました。
イッツオーケー!
前回は異常なほど(?)元気だったにも関わらず、採血後に長いことベッドを占領して横になっていたのです。すまぬ。
私は、二度目の採血ということもあり、気楽に構えていました。採血針を右腕に、左腕は採血後の栄養補給用点滴針を入れます。左腕の注射針を刺してくれたのは、まだ若い看護師さん。彼女も凄腕の持ち主でした。「ごめんなさい、少し痛いです」と言いつつ点滴針を刺しますが、ちくっともしない! 凄すぎる。
十五分間ほどの採血を終えて、看護師さんが貯血パックを掲げて私に見せ、名前を確認。
「はーい、確かにお預かりしますね」と看護師さんが言った瞬間、私は目の前が真っ白になったのです。
よく『目の前が真っ暗に』と言いますが、迷走神経反射(いわゆる脳貧血状態)を起こすと、目がチカチカして視界は真っ白になるようです。
「すみません、なんか気持ち悪くなっ」
そこで私は一瞬、失神したみたいです。その間、約十秒。
「あら、大変!」
「血圧60まで下がってます」
「心拍安定してますから大丈夫」
「検査より先に点滴入れましょうか」
「主治医の先生はどなた? 確認してから点滴を」
遠くから聞こえてくる、看護師さんたちがバタバタしている音と会話。はっと覚醒した私は、ちらっと横目で心電図計を確認しました。
60、37、60の数字が縦に並んでいて、一番下の数字の横に波形が見えます。ということは、これは心拍数。
意外と冷静にこれらのことを見て、今でもはっきり覚えています。
「点滴入れますから、すぐに良くなりますよー!」
ベテラン看護師さんが言ってくれて、しばらくすると気分が良くなり、深呼吸も出来るようになりました。
「すみません、椅子の方に移れなくて」
謝る私に、看護師さんが明るく言ってくれます。
「ああ、大丈夫。それはいいです」
その後、採血前に点滴の注射針を刺してくれた若い看護師さんが来られて、私の足首で血圧を手動で測定。
しかし、私の血圧、今は上が140もあります! 下は79とかだったかな? 忘れた。
「足首は正しく測れないんです。でもこれなら多分、正常に戻っていると思います。点滴終わっても、もう少し休んでいてくださいね」
看護師さんは優しく言ってくれて、違う患者さんの方に行かれました。
結局、二時四十五分頃に始まった自己血貯血、全て終えて採血室を出た時は四時四十五分になっていました。一時間もオーバーしてしまった……。
皆さま、ご迷惑おかけして本当にすみません。この場を借りてお詫びさせてもらいます。
って伝わらねえー!
次回は、いよいよ手術二日前から手術前日、そして手術当日までお話しさせてください。
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