ステアーという女

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 目の前で腰を抜かしていた男が喉を鳴らして驚愕する。こちらをジッと見ながらも死角の相手を撃ち殺した私をどうやら完全にビビってしまったらしい。 「大の大人が失禁してんじゃないわよ」  大股開けて抜けた腰で後ずさっている男の睾丸をブーツで蹴りを入れる。  男は今度は叫び声すら上げられない様だ。顔面を蒼くしながら目をかっぴらき、股間を押さえながら床を転がっている。あまりにも滑稽だったが流石にやり過ぎたか。  私は男の首根っこを引っ掴んでヴィレッジに戻る事にした。 ******  ヴィレッジ。川崎駅東口から出てすぐの地下街。そこは戦前から丸ごと地下核シェルターとして作られていた。  駅前の地下街だけあり、それなりの収容人数があり、緊急時、つまり災害時には何重の分厚い扉が稼働し、外部からの一切から収容者を保護する。そう言った大型核シェルターは今、人間の唯一の居住出来る場所となっていた。  地上で人間が何週間も活動が出来る場所があるとするならば、それは人の手が及ばない山奥ぐらいだろうか。
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