ステアーという女

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<ああ、ステアーか。早いナ。さっき出かけて行ったばかりなのニ。門がまだ五枚目が閉まりきって無いゾ>  思わず笑みが漏れる。私はそのまま開門の申請を端末を操作して送る。 「閉めるのが遅いだけよ」 <オイオイ、俺のせいかイ? この門が赤ん坊のハイハイより遅いだけさ> 「ほら、良いから門を開けて。お土産があるわ」  目の前の門がゆっくりと開き始める。開き切れば三〇メートルくらいの幅の通路、になる。  無駄に広い様な気もするが、きっとこのヴィレッジが使われた当時は通路いっぱいに人が押し寄せていたのだろう。そう思ってしまうと、小便をちびって膝が笑っている野郎と私の2人だけで通るこの通路は実際よりも広く感じた。  門を全て通り抜けると漸く綺麗な床を踏んだ。  機械的な明かりは冷たさの中に安堵感があった。空気清浄機のけたたましい稼働音が無ければ最高なんだけど。もう十数年も住んでいればいい加減慣れたと言うものだ。  天井にはめ込まれた白い照明に照らされたエントランスは無人で、左右と正面の壁にバルブハンドルが付いた密閉扉が付いており、それぞれが管理区、居住区、製造区へ続いている。
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