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エントランスの中心でしばらく立っていると真上と真下の天井、床の僅かに開いている穴から白い霧を噴射される。汚染除去成分の入った水分らしいが穴が大きいせいか霧吹きの水滴が荒く、たまに服の中に入ってはインナーが濡れるのが気持ち悪い。
眉を顰めていたら扉のひとつが開いて見慣れた顔が現れた。
眼帯隻眼の男。黒髪の角刈りは整えられ、太い眉毛と鋭い目つきは雄々しく、そして威圧感を放っている。
枯れ葉色のパンツにワークブーツ、袖が捲り上げられたワイシャツに防弾ベストの前は開いている。
恰幅の良いその姿は如何にも軍人のお偉いさんといった雰囲気を醸し出している。
その眉間に深い皺が刻まれた険しい顔の男はズンズンと私の目の前まで肩で風を切りながら詰め寄り、そして次の瞬間私の頬が熱くなった。
「ステアーお前! あれほど危ないから一人で突っ込むなって言っただろうが!!」
思いっきり私の頬を引っ叩いた目の前の男、他でもない私の義父、南部であった。
「そんだけのビンタが出来るならその腕はもう大丈夫ね」
「生意気言ってるんじゃねぇ! ってそのガキはなんだ」
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