ステアーという女

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 半ば予想通り、と言いたげなイサカの顔に思わず噴き出しそうになりつつもここは堪える。  イサカはヴィレッジで数人しかいないアメリカ人の血を持つ長身の男。私と同じ調査隊の一員。今日は内勤だったがショットガンと拳銃の扱いに関しては南部が一目置いている男だ。一九〇近い長身に色白の肌に茶髪。肩より少し下程の長さの髪を後ろで束ねている優男。声も物静かな落ち付いた雰囲気を持っているが、さっきの通信の様に結構フランクな口調で話し、酒も良く飲む。泣き上戸なのが少し面倒くさいのが玉に瑕だ。  イサカは私の方に寄って来ると自然に背中に手を回して横に立った。 「さぁ、後は俺と南部さんに任せテ、ステアーは休むと良イ」 「ありがとう、そうさせてもらうわ」  私は南部に軽く手を振ると自分の部屋に戻る為扉を開けた。 ******  扉の向こうにステアーが消えると南部は小さく溜息をついた。 「やれやれ、気付かない内にやんちゃになったもんだ」 「あのくらい逞しくないと外の世界で生きて行けませんヨ」
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