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ボロを纏った人々の合間を縫って、油まみれのエプロンを着けた男の子が手を振りながら駆け寄って来た。
彼こそヴィレッジの名コック、川手理緒。一三歳の少年だが並はずれた料理センスを持っていたらしく、十歳で探索隊に入れられるこのヴィレッジで珍しく探索隊に入れられる事無く調理場に入った天才児。
背が低く、よく私の後ろを着いて歩く姿に私は実の弟の様に可愛がっていたが、最初は普段から一緒に行動をしていた彼にそんなセンスがあるとは思ってもいなかった。
私が初めて探索隊となって狩猟に出かけ、初の獲物である馬を持って帰って来た時、僅かな時間で捌いて煮物にして振舞って来た時は私も彼の実力を認めざるを得なかった。
彼の存在があってか、ただある物を焼くだけの物が用意されていたこのヴィレッジは、海沿いのヴィレッジが生産する塩を物々交換で取引する様になった。
ヴィレッジは戦前の駅の地下街や、地下鉄の駅そのもの等がそのままシェルターとして機能するものであり、ヴィレッジ間が繋がっている地下鉄のヴィレッジは互いに交流が容易だが此処はそうもいかず、地上を行き来するしかない。
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