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地下鉄は戦前の地下鉄の線路を歩くだけで良い。
落盤が無い限りは汚染によって突然変異したミュータントを気にするぐらいで良いし、何より道に迷う事も無い。旅の道中で汚染された水を含む雨に降られる事も無いのだ。
脱線したが、理緒は探索隊に参加しなかったが私の身を凄く案じてくれる。
彼は体が小さく、彼自身の性格的にも探索隊は向かないだろうと今は思う。彼は怖がりで優しすぎる。
生きた状態の獲物を怖くて捌けず、包丁を持ったまま固まっていた事もあったっけ。今では流石に慣れた様だが、私は調理をする姿を見ていないので真偽の方は明らかではない。
「ああ、理緒、ただいま」
「おかえり! 早かったね!」
ぎゅっと私に抱きついてくる。その回した腕は私の腰回りに届いており、顔を私の腹部に埋める。私の顔を見上げた彼の絹糸の様なサラサラの短い黒髪をそっと撫でた。
「大した用事じゃなかったからね」
「ふーん。悪者退治じゃなかったの?」
理緒には出かける理由を言っていなかった。何故知っているのだろう。
「誰から聞いたのかしら」
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