キャラバン:前編

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 先日のブリガンドの襲撃があったのもあるが、それ以前に、此処に住む二〇〇人近い住民の内、三〇人程は探索隊やヴィレッジキャラバンとして出入りはするが、基本的に外に出て戦う能力のない女子供、老人等はヴィレッジから出る事はない。  その三〇人の外へ向かう人間も、全員総出で出る事も無く、毎日門が開く事も無い。  人は、1つの場所に居着くと惰性でその場に住みつき、動こうとしない。それを悪だとは思わないが、ヴィレッジの収容人数にも限りがあれば、施設そのものにも寿命と言う物がある。  ヴィレッジを開発、運営していた会社など、先の戦争によって失われている。正規の管理者、整備士など六〇〇年以上も前には死んでいる。  そのヴィレッジを引き継ぎ引き継ぎ管理し続けていた一握りの人間達の中に南部もいた。  ヴィレッジの細部に関するマニュアルは存在するが、それを理解し実行できる人間は少ない。いつ外に出れるとも知れないヴィレッジの中で学と言う物を教え伝えるのは難しく、残されたボロボロの戦前から使われていた教科書を使い、私を含むヴィレッジ住民は限られた知識を教えられてきた。
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