キャラバン:前編

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 だが専門的知識と言う物はその環境では教えるのは難しかった。  住民達には伝えられていないが、このヴィレッジは色んなところでガタがきている。  汚染水を浄化する浄化装置はヴィレッジの要の1つであるが、その浄化装置の一度に浄化できる水量も年々少なくなってきている。機械の老朽化だ。  地上のあらゆるものが瓦礫に沈んだこの世に、浄化装置の正規品などありはしない。そう言った物の代用となりそうなガラクタを集めるのも私達探索隊に与えられたミッションの1つ。  いづれ、人は地上に巣立たなければ。ブリガンドの様にならず、僅かにあるであろう汚染されていない土壌を探し、そこに移民しなければ、もう数10年もしない内にこのヴィレッジは限界を迎えてしまう。  これは私の考えでもありつつ、南部やイサカ等の事情を知る人間は同じ事を考えていた。  だが、現実と言うのは、上手くいくものではない。  結局そう言った土地も見つけ出せず、私もまた集団の惰性と言うぬるま湯の中に身を置いている。  過去に、戦前の本屋を立ち寄った時に読んだ本の中に、動物の根本には怠惰が存在するとあった。結局は人間も動物と言う事だ。
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