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この川崎駅の中は散々探索された手垢まみれの場所だ。簡単な瓦礫は探索者達によって撤去され、ある程度見通しも良い。だがそれでも大型施設の廃墟である。
あちこちが崩れ落ち、虫に食われた葉っぱの様に穴だらけになった場所なんて潜った所で百害あって一利なしと言っても良い。少なくとも今の私なら行こうとは考えないだろう。
そんな場所で捨てられた赤子の私の鳴き声に気付き、拾って地下シェルターまで運び、育ててくれた男がいた。
私は汚染された空気を泣きながら肺に吸い込み、地下街に運ばれた時はその男も半ば諦めかけていたが、どうやら私の体力は並はずれた物だったらしい。
もしかしたら、数百年と言う長い年月の内に私の一族は汚染に対するある程度の耐性が体質として身についていたのかもしれない。なんて言う者もいて私は色々検査を受けさせられたらしいが、特別な事など何もない、逆に不思議な健康優良児だったそうだ。何を検査したかは知らない。専門家でもない、ただ銃をぶっぱなすだけが取り柄の私にはわからない事だ。どうせ他人と違う部分が分かったところで私の生き方が変わるわけでもない。
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