キャラバン:後編

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 娯楽やその他雑多なもので溢れかえっていた戦前。廃墟と化した川崎周辺は一通り探索した。ガラス張りのお洒落な喫茶店。多くの筐体が並んだゲームセンター。多くの漫画や雑誌が並ぶ大型書店。トレーディングカードを取り扱う玩具屋……。  どれも大半が瓦礫に埋もれていたり、長い年月、人が踏み入らなかった場所に積もった埃にまみれていた。  本来人々で賑わっていたであろう場所が無人と言う、広さと静けさには僅かながらに恐怖感と物悲しさを抱いた。  エンドテーブルに視線を移す。  ヴィレッジ近くにあったゲームセンター跡。そこで拾ったぬいぐるみが目に入った。  赤い髪の少年を模して作られた、ぬいぐるみ。気の強そうな赤い瞳に惹かれてついつい持ち帰ってしまった物だ。  初めて外界を探索した時に私は最初から記念に何かを持って帰るつもりでいた。共に行動していた南部に最初は無駄な物は持って帰るなと渋られたが、結局駄々をこねて持って帰ってきてしまった。なんだかんだ持って帰る事を許した南部は口は悪いが冷酷な人間ではないと思った。
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