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このご時世、肌の色や髪の色でギャーギャー抜かす人間はいない。というより、狭く限られた社会で多くの人種の血は既に闇鍋の如く混じっている。本当の親がいないというだけで、こうも自分と他人の違いが気になってしまうのかと、私は私のコンプレックスに辟易する溜息を洗面台に零した。
「朝っぱらか溜息ですかイ? お嬢さン」
機械から発せられる声に振り向く。そこには私の部屋の扉にはめ込まれたガラスからこちらを覗きこんでいるイサカの姿があった。
外部の音は金属扉と部屋の壁で聞こえないが、個室には外部と会話できるインターカムが付いている。
朝早くから人の部屋のインターカムから声をかけてきたイサカに私は再度溜息を漏らした。
「朝っぱらから女の部屋になんの用?」
扉の横のスイッチを押して金属扉をスライドさせる。
「相変わらズ、朝は苦手かイ?」
「わかっているならこんな時間に来ないで」
「折角君の分の食事を持ってきてあげたんだガ」
イサカの手には蓋付きの容器、その上には小さな丸いパンが乗っていた。
「……入りなさいよ」
「どうモどうモ」
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