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私は育ての親である南部と言う男の住居に身を寄せながら、今は地下街のみんなの為に外界の残された資源を探し歩いている。
捨てられた場所に一緒に置かれていた銃、そして私の名前にもなった銃を腰に携え、私は先程行こうとも思わなかった川崎駅に足を運んでいた。
そして三三一八年。硝煙の臭いが私を呼んでいる。
止まったエスカレーター、人が一人上れるか危うい程に崩壊した大階段。それを見上げ、ゆっくりと、腰のホルスターに指を滑らせた。
割れたガラスや瓦礫の隙間を縫う様に吹く風が、ここで死んでいった人々の断末魔の叫びの様に時折耳障りに耳元をすり抜ける。
左腕に付けられた放射線量計測器を搭載したデジタル腕時計に目を向ける。既に日が沈み、角ばった数字の羅列が深夜零時を示そうとしていた。
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