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「どうかしらね」
誰もが何もかも足りない世の中だ。物欲に勝るものはない。どんな人間だろうと、人は欲を内に秘めているもの。
私は慣れた相手だろうと余計な関係は持ちたくないと思っている。いつそれが足枷になるかもわからないからだ。
貸しは作っても、借りは作りたくない。
そうは思っていても、生きている限り自分のあずかり知らぬ所で借りを作っていたりする。
一人で生きてはいけない世界でそう言う勘定をするのは気が滅入るから止めた方が良いと思うのだが、どうしても抵抗感を感じてしまう事に否定できない。
頑固な私の感情に僅かながらイサカには申し訳ないと思いつつ、早々に食事を終え、何事も無く解散した。
私は聞いた話を理緒に話すべく、自室を後にする。部屋の扉は内側からはスイッチひとつで開閉出来るが、外から入る場合は中から開けて貰うか扉の横に付いているソケットにカードキーをスライドさせて通し、開かせる。
私はカードキーを持った事を確認して部屋を出た。
――居住区画。
「あ! ステアー!」
食堂に顔を出すと偶然目の前を通り過ぎた理緒に声をかけられた。
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