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両手で大きな寸胴を持っている。片付けでもしていたのだろうか。
食堂は地下街の元飲食店を改装した場所だ。改装と言っても隣接している飲食店の壁をどかして広いひとつの部屋にした程度。
だが元はしっかりした飲食店。厨房は本格的な設備であり、大きな冷蔵庫や大火力のコンロ、パン屋であった場所には釜戸もある。
「理緒、忙しい?」
「別に! もうすぐ片付け終わるから待っててね!」
そう言うと自分の体の半分くらいの大きさはあるであろう寸胴を持って、やや海老反りになりながら駆けて行った。
飲食店をくっつけただけなので厨房が何箇所かに分かれており、各厨房で調理したものを1か所に集めてそこで配給をする。
故に、手早く片付けする為に空容器は手分けして運んで元の厨房に戻している様だ。
近くにある席に付き、頬杖を付いて辺りをぼんやりと見回す。
理緒の他にもエプロン姿のおばさんおじさんが片付けを始めている。理緒の両親の姿もあった。私は両親の方とは顔見知り程度の仲だったので目が合ったと同時に軽く会釈だけ済ませた。向こうも忙しいらしく軽く笑顔で応えるだけに止まった。
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