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食堂にはまだ食事中の人間がちらほら見られた。いつも狭いヴィレッジに詰め込まれ窮屈していて、どこを見ても皆が今にも死にそうな表情を浮かべているが唯一の娯楽と言って良い食事は誰もが笑顔だ。例えぎこちない笑顔でも、表情を変える事が出来るだけマシと言える。
「自分で食わないならこっちに寄越せよぉ!」
声が聞こえ、チラッと聞えた方に目をやる。
食堂から出て少し離れたところ、通路の隅で少女が男に絡まれていた。
「家で病気で寝込んでる母さんがいるんです……!」
今にも泣きそうな声で、今日の配給品であるスープの入った容器を抱きかかえている。
男の腰の高さにも満たない小さな少女は、ここから見てもわかる程に怯えて震えていた。
直ぐ近くに昨日通った人の多い通路が繋がっている。しかしここからでも見える範囲に人が行きかっているにも関わらず、彼女を助けようとする者はいない。
他人のトラブル等、関わりたくないと無関心を装っているのだろう。私はその周りの雰囲気に苛立ちを覚えた。
他人を救おうと思わない者は救いを求める資格はないと私は思っている。
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