はじまりは静寂から

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 私を拾い育ててくれた義父、南部から貰った無骨なデザインの腕時計。地下街に存在した時計屋から使えそうな部品を集め、南部が独自に組み上げた代物。外を出歩くようになったからと私に用意してくれていたのを知った時は嬉しくて隠れて涙したのは恥ずかしい思い出。一九歳となった今ままで育ててくれた南部には頭が上がらない。  育ての親ではあるが、彼を父と呼ぶには気恥ずかしい。けれど、こうして時計を眺めていると近い内にお礼と一緒に言ってあげたいと思う。  さあ、そろそろ、私の住む場所に悪戯しようとしているならず者(ブリガンド)共にお仕置きしないと。  私は時計のタイマーをセットし、つけていたマスクを外した――。
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