ステアーという女

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 その事があってか、事を構える時はなるべくマスクはしたくないと思ってしまった。マスクを着けずとも活動できる川崎駅周辺で出来る芸当だが、十分。  クリアな視界で捕らえた相手に、私は隙を見て、飛び出した。 「オラァ!!」  声を上げ、両手に一丁ずつ構えた愛銃を呑気に煙草をふかしていたブリガンド共に向けてぶっ放す。  トリガーを引き、マズルジャンプを抑える為に腕に力を込める。フルロッキングであるこの銃は反動が少なく、弾をばら撒くには適している。視界がマズルフラッシュで断続的に照らされる。間もなくして、正面から泣き叫ぶ男の情けない声が響きだした。  激しい銃声の中でも聞えるほどの悲痛な叫びだったが私は容赦等しない。飛び込む様に、相手に向かって走り出した。 「な、なんだテメェ!!」  真っ先に私の攻撃に気付き、被弾を免れた男は素早く時計塔の陰に隠れ、叫ぶ。 「私ん()に喧嘩ふっかけてその言い草、気に食わないわね」 「あのヴィレッジの奴か! 舐めた真似しやが……!?」  なんて面白い顔をしているのだろう。
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