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はじまりは静寂から
西暦二九九九年。突発的に起こった第三次世界大戦によって世界は、地球は死を迎えた。
かつて日本と呼ばれた国もその例に漏れず、文明は瓦礫の山へと姿を変えたのである。
僅かに生き残った人々は人の住めない地となった地上を離れ、地下シェルターや地下鉄跡などに身を寄せ合って暮らした。
……と、私は聞いて育った。実際の所、文明崩壊から何百年も経てば当時を生きた人間もいない訳だから本当はどうだったのか分からない。
ただ分かる事はひとつ、地上において一大文明を築き上げたご先祖様たちの爪跡は深く今も残っているという事だけだ。
神奈川県川崎市川崎区、うねる大蛇の様に大地に横たわる多摩川は瓦礫と埃、そして大気汚染と崩壊した工場跡から流れる汚染物質で汚れ、文明崩壊前よりも細くなり、静かに流れる水の流れの衰退は人類の今を表している様だ。
そんな多摩川の近くに建てられた多くの場所へと繋がる駅、川崎駅。
その駅は幸区とまたがる巨大な駅で戦前は大型商業施設と隣接し、大変賑わっていた様だ。
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