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SIDE 魔王
執務室に報告へやってきたマリエッタ嬢は少し申し訳無さそうだった。
彼はすっかりこちらを警戒しており、ミナストリア辺境伯のこともあまりピンときていないようだという。
「ですが、彼はミナストリア伯爵様へのご挨拶を希望されました。ご予定を確認するとお伝えし、お部屋に残して参りましたがいかがいたしますか」
「ならばすぐにでも出向こう。こちらへ来てもらってもいいが折角だ。庭で茶でも飲もう。その方が気も晴れるだろう」
「中庭でございますね」
「ああ」
彼女は美しい所作で会釈をし部屋を出ていった。
行き届いた令嬢だと思う。歴戦の勇者様に相応しい娘だ。
昨夜は嫉妬で醜女などと言ったが実に愛らしい顔立をしている。きっともう少し大人になれば美しいばかりの女になったろう。
乗り気でない彼が絆されるのは時間の問題に違いなかった。
そんなことになれば僕の入り込む余地などなくなってしまう。
だからこそ今この芽を刈りとることができて、本当によかった。
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