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反射的に剣に手をのばすが手は空を切った。
誰が寝室で武器など持っているだろう。
まして新婚初夜の寝室で。
「誰だっ」
ベッドから飛び退き、声の方向を鋭く睨む。
「僕だよ」
僕?
考えを巡らせても自分の知人が妻のベッドに一人でいる理由はない。
それにの声、“僕だよ”などと親しげに言われるような人物の中には心当たりがない。
自分がここへ来てからも。それ以前の記憶にも。
だとすると、妥当な答えは刺客或いは。
「…マリエッタ嬢の恋人か」
「違うね」
何故?とでも問いたげな声色だった。
「なら俺を殺しに?」
「ふふ」
愉快そうな笑いがベールから漏れた。
心から楽しそうな声に苛立ちが湧き上がる。
「マリエッタ嬢はどこだ」
しかしそれより今重要なのは彼女の安否だ。
うら若いマリエッタ嬢。俺にとってはまだ子供。傷一つもついてほしくはない。
「マリエッタ嬢はここにはいない。貴方と僕だけだ」声の主はうんざりしたように言う。
「無事なのか」
「初夜も躊躇うほどの醜女。しかも会ったのは午前の挙式だけなのにそんなに気になりますか」
謎の男は今度は少し苛立ちもみせる。
「それでも今は俺の妻だ。それに醜女じゃない」
「…そうですか」
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