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ハルヒコも友人たちの気配が遠ざかっていくことに気がついていた。気遣いに感謝し、アオイを見る。
「アオイ、ありがとう」
「うん」
アオイはこれからもよろしくねと、身体を寄せた。
その華奢な体を抱きしめる。
紆余曲折はあったものの、アオイはプロポーズを受け入れてくれた。
結果的にはほとんど役に立たなかったが、特訓に付き合ってくれたリョウヘイやシゲル、タカシにも感謝したい。
持つべきものは友人だ。
シホとナミには困らせられたが、なんだかんだ言ってもアオイをフォローしてくれたのだろう。
そしてタエコ――。
あのガラの悪い幽霊がいなかったら、プロポーズできていたかどうかわからない。
「俺は世界でいちばん幸せ者だ」
「あたしも」
アオイは顔をあげると目を閉じた。
ハルヒコも目を瞑る。
ゆっくりと唇を重ね合おうとした、その時――。
ピリピリピリ。ピリピリピリ。
音はアオイが首にぶら下げている携帯端末から鳴っていた。
アオイが端末に出る前に屋上の扉の方から
「お仕事中ーっ!」
という声がした。
シホとナミが笑っている。
アオイも笑ってはーいと返した。
「じゃあ戻るね!」
「うん。がんばって」
アオイは小さく手を降るとシホたちがいる出入口に向かって駆けていった。
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