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「あぁ、またやってるんですかぁ?」
と顔を出したのはナミである。
「バカだよバカ」
「よくやりますねぇ」
「なんであたしの周りにはこんな奴らしかいないんだろうなぁ。あたし男運ないのかな」
ないね――。
といったのはタエコである。
「簡単に言わないでよ。タエコ、アンタ幽霊でしょ。何とかできないの? 取り憑いて殺すとか」
お前ほんとに看護師かとタエコは鼻白んだが、商売を気にしたら女はやっていけない。
「肝心なときに役に立たないんだよなぁ」
「諦めな」
誘い水にもタエコは乗ってこない。
「どうして仲良くできないんですか」
ナミはあきれたような顔で間に入る。どうやらナミはタエコのことが気に入っているらしい。
てっきり先週成仏したと思っていたタエコだが、単に消えただけで、まだこうして屋上に住んでいる。
聞けば幽霊にも都合があるらしく、そう簡単には成仏できないらしい。
「何とかしてくれないんだったら出てこなくていいわよ」
「んだとォ、このヤロウ!」
「ちょっと二人とも……」
タエコは罵り合っているポンコツ二人の方を向くと
「おい、お前ら、シホから話があるんだとよ!」
と呼んで、ニヤリと笑った。
「なっ!」
――なんてことを言いやがるんだ!
タエコッ――と怒鳴ったときには、口の悪い幽霊はすでに姿を消していた。
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