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彼女はブラックアウトした画面を凝視して唐突に、こんな話をした。
自分には脳に幾つかの血栓が在って頭を強く打ったりすると致命傷になりかねない。だから軍に捕まって、拷問されて大切な情報を喋りそうになったら、隙を見て何処かに頭をぶつけるのだと。身体を拘束された状態ではそれも叶わないが、拘束が解かれたタイミングで迷わず遂行すると。
「ゆうとさんが理解できないの、当たり前です････」とろけそうに優しい声で言う。「日本、何でもあります。民主主義････平和････自由････幸せ････理解できないの、当たり前です」
彼女は笑みを浮かべた。
きっといつか分かってくれるだろうという期待と、永遠に分かり合えないだろうという諦めが入り混じり、最後は親愛の情に託したという笑みだと、僕はそう感じた。しかし、その時点で、僕は彼女のことを理解できるとは思っていなかったし、彼女と関わることで自分の未来が大きく変わるとは全く予想していなかったのだ。
（第一章 町工場のジャンヌダルク に続く）
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