4人が本棚に入れています
本棚に追加
1.雨の休日
雨の音がする。
会社は休み、独身男の一人暮らし。
となると、ついつい朝寝を決めこんでしまう。
昼前になってようやく起き出し、カーテンの外をうかがった。
「うっわ、降ってんなあ」
梅雨に入り、毎日じめじめとした空気が家の中にも外にも満ちている。
俺は除湿がてらエアコンの冷房を入れ、小型のサーキュレーターのスイッチを入れた。すぐに空気の対流が起こり始め、室内に涼しい風が混ざりだす。
「さて……」
足を洗面所に向ける。
社会人になりたての頃、ちょっと奮発して買った乾燥機付き洗濯機。
前夜のうちにスイッチを入れておけば、朝には洗濯と乾燥まで終わっている。花粉だろうが黄砂だろうが梅雨だろうが、まったく俺の敵ではない。
もう連れ添って10年にもなろうかという、俺の大切な相棒だ。春先と梅雨、それに台風の時期はこれが地味に誇らしい。
―――と。
そんなことを思いながら踏み入れた洗面所に。
いてはならぬものが、いた。
最初のコメントを投稿しよう!