1.雨の休日

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1.雨の休日

 雨の音がする。  会社は休み、独身男の一人暮らし。  となると、ついつい朝寝を決めこんでしまう。  昼前になってようやく起き出し、カーテンの外をうかがった。 「うっわ、降ってんなあ」  梅雨に入り、毎日じめじめとした空気が家の中にも外にも満ちている。  俺は除湿がてらエアコンの冷房を入れ、小型のサーキュレーターのスイッチを入れた。すぐに空気の対流が起こり始め、室内に涼しい風が混ざりだす。 「さて……」  足を洗面所に向ける。  社会人になりたての頃、ちょっと奮発して買った乾燥機付き洗濯機。  前夜のうちにスイッチを入れておけば、朝には洗濯と乾燥まで終わっている。花粉だろうが黄砂だろうが梅雨だろうが、まったく俺の敵ではない。  もう連れ添って10年にもなろうかという、俺の大切な相棒だ。春先と梅雨、それに台風の時期はこれが地味に誇らしい。  ―――と。  そんなことを思いながら踏み入れた洗面所に。  いてはならぬものが、いた。
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