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十三.
はっ、と、目を覚ました。
「ミ……ミワ!?
おい!ミワが目を覚ましたぞ!
ミワ、わかるか、パパだぞ!
お前は本当に……十年も眠りっぱなしで……!」
「ミワ!
良かった!
あぁ、奇跡だわ!
ミワが目を覚ますなんて!
ねぇサナ!」
「うん……お姉ちゃん!
わかる?
サナだよ!
十年も経っちゃったから、あたしもうこんなに大きくなったんだよ……!
お姉ちゃん!」
ここは……家、だ。
現代、令和の日本の、薄っすらと記憶にある、私の、部屋。
本当にまた、生まれ変わったの……?
それとも、十年眠ってたって……あれは全部、夢……?
ヤタは……?
そうだ、ヤタはどこ?
ヤタは、一緒じゃないの?
「お姉ちゃん……うぅ……」
制服姿の、十五歳のサナが、ベッドに横たわる私に覆いかぶさって泣き崩れる。
そう……か……。
「サナ……ごめんね……。
覚えてる?
五歳の時……。
私が滝に落ちたあの日、サナの薬、取り上げたりして……。
ごめんね、本当はね、私、サナのこと、大好きで、でもサナばっかりみんなに構われてて、ずっと、嫉妬してたんだ……」
まだ朦朧とした意識の中、私はずっと言いたかった言葉をぼんやりと連ねた。
「いいんだよ、あたしそんなこと全然気にしてなかった……!」
「そしたらね……夢、そう、夢の中で……私、全然別の所で別の妹がいてね。
その子をサナの代わりにいっぱいいっぱい大事にしたよ。
なのに、なのにね……私……その子……どうして……どうしようもなくて……」
「いいの、もう……!
いいんだよ、お姉ちゃんがいてくれたら……!
大丈夫、大丈夫、ずっと、一緒、一緒だよ……!」
思わず、身を起こした。
「……ヤタ……?」
私のその言葉に、顔を上げ不思議そうに首を傾げるサナの背後で、ふいに振り始めた雨が、窓ガラスをそっと叩いた。
終
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