第六章 反撃開始

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 四月になり、僕たちはそれぞれ一学年進級した。夢叶は中学生になり、僕は中学三年生。それどころではないが高校受験の年になった。架は高校二年生。父は今年で五十二歳、夏海は四十七歳になる。  始業式があってまもなく、DNA鑑定結果が郵送されてきた。結果を見て僕らは困惑した。  佐野夏海は三人の親として認定  佐野清二は歩夢の親としては認定、架と夢叶の親としては否認  「あーちゃんだけずるい!」  夢叶に泣きながらぽかぽか殴られた。架と夢叶には悪いが自分が父の血を引いていると知ってうれしかったのは事実だ。  父は鑑定結果を見て、  「三人とも僕の子どもだ。夏海とは離婚するが三人の親権は僕が取る」  と宣言した。その日は火曜日、また午前中から大夢が訪れて、リビングの父のソファーに座らせた全裸の夏海に、  「旦那のソファーの上でほかの男に股を開いて悪い女だな」  と言葉責めしたあと、二人のいろいろな体液をソファーにこぼしながら、三十分以上も夏海の肉体を貪った。  大夢は夏海を抱きかかえて階段を上り、また夢叶の部屋に入った。その間、性器同士はずっとつながったまま。大夢は夏海に、夢叶の一番のお気に入りの服と下着を身につけるように命じて、今度は着衣のままの夏海を夢叶のベッド上でさんざんに犯した。  それを見ても夢叶はもう泣かなかった。  夏海が帰ろうとする大夢に「また金曜ね」と声をかける。  「金曜日、やっと仕返しできるんだね」  満面の笑顔で夢叶がつぶやいた。  金曜日、特に準備したことはない。父に頼んで、父の会社の社名入りの封筒に大金を入れたものをあらかじめ架に渡しておいてもらったくらい。  大夢は僕らの自宅の近所のコインパーキングに自慢のベンツを駐め、いつものように歩いて勝手知ったる不倫相手の自宅にいそいそと向かう。  架と夢叶は当日学校を欠席。無断欠席や無断早退は当然母に連絡されてしまうから、父が当日の朝、体調不良を理由に欠席連絡を入れた。  大夢が僕らの自宅に吸い込まれる。夢叶が走り出し、泣きながら近所の交番に駆け込む。  「助けて! 知らない男が家に押し入ってお母さんを襲ってるの!」  交番から本署に応援要請が飛び、犯人が一人か複数か分からないということで、まず五人の警官が佐野家に突入した。その後も続々と駆けつける警官たちと警察車両。近所から野次馬たちが集まる。  警官突入直前、架が自宅に忍び入り、見慣れぬ黒いビジネスバッグに父から受け取った封筒を押し込んですぐに出てきていた。  警官突入時、二人は仏壇のある和室で性交していた。男は服を着たままで、男に組み敷かれた女だけ全裸だったのを見て、警官たちは強制性交だと確信して、現行犯逮捕した。しかも、寝室に置いてあった男のカバンから百万円入りの封筒まで見つかったという。封筒記載の社名は男の勤務する会社ではなかった。当然、強盗の容疑も男の罪状に追加された。  警察から連絡を受けて、父も会社を早退して帰宅。父から連絡を受けて僕も学校を早退して帰宅。架と夢叶に合流した。
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