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「ジョリーって、向日葵みたいだよな」
ベンチで休憩していたら、ふと真澄君が変なことを言い出した。
「向日葵? どこが?」
「真っ直ぐな所」
意外な答えに目をパチクリさせていると、真澄君は少し照れ臭そうな顔をしている。
しかし私は、しっかりとこの前のやり取りを覚えている。
「真澄君? 私のことを、屈折してるって言ってませんでしたっけ?」
わざと敬語を遣いジローッと横目で見ると、真澄君が苦笑する。
「確かに言ったな。でもさ、屈折するってことは元は真っ直ぐだったってことだろ?」
意外にもちゃんと答えが返ってきたことに驚く。
「何か、思考家に影響されてない?」
「そうかもな。ジョリーのせいで面倒臭くなったかも」と、失礼なことを言うから頭を叩いてやる。
「嘘だよ。とにかく、ジョリーの中には芯を感じるんだよ。向日葵みたいに真っ直ぐな芯」
子供のように足をプラプラさせながら、こちらを振り向くとニッコリと微笑む。
その顔は今までに見たことがない。綺麗で優しい笑顔。
だからだろうか。心が微かに動いた。どちらの方向かなんてわからないけれど、ただ動いた感覚がする。
「……芯なんてない」
否定する私に真澄君は「そんなことない」と、言う。
「思考家なのも、自分で答えを探そうとしてるからだろ? それは自分軸があるんだよ。真っ直ぐな芯がな」
顔を上げると真澄君の漆黒な瞳が私を見つめる。
それだけで、私と同じように彼の中の何かが動いていることを知る。
こういう時、自分の観察力を怨めしく思う。
鈍感であればこのまま楽しむだけでいられたのに、彼の中の何かの気配を感じてしまった。
その瞬間、切なさだけがこの心を支配する。
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