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「見ない顔だけど、どこから来たんだ?」
そう尋ねるおじさんに「東京」と、答える。
「一人旅?」
グイグイと来る姿勢にいつもならば何を企んでいるのだろうか。なんて、人間不審の私は逃げていたに違いない。
しかし、どうせ死ぬ身。
何を企んでいようが、数日後には消えるのだからおじさんの思惑を考える必要もない。
シンプルに人と会話ができる。
「一人旅です。もう時期死ぬんで」
偽りのない答えを最初は疑っていたおじさんだけれど、私が真面目な顔をしていたからかその顔から笑みが剥がれ落ちていく。そして小さな声で見ず知らずの私の死を嘆いてくれる。
「……まだ、若いのに」
「でも、二十五年は生きましたから」
それだけ言うと口を閉じる。
私からしたら長かった。苦しかった。
だけどその理由を話すつもりはない。
だって、どうせ理解はされないから。
死ぬ資格がある程に辛い人生だったかとか。そんなことなら良くあることだとか。
それは本人にしかわからないし比べる必要もないことなのに、人は他人の不幸と比べてはジャッジしたがる。
そういうのは、もうウンザリだ。
「……普通に見えるけどね」
おじさんは私をジロジロと見ては、視線を落とした。
しかしその視線も言葉も不思議と不快ではない。
“__何か、私変かもしれない”
“__あなたは、普通よ”
過去の映像が甦る。
他者と違う自分の内面に悩んだ私に、母は呆れたように言った。
まるで個性を主張しているかのように思われたのかもしれない。私は苦しみを訴えただけなのに、特別なことを振りかざしているかのように否定された。
だけど普通って何?何を基準にしてるの?
随分と一人悩んだ結果、その人の経験値の中で判断されることに気づいた。
そして、私には無理だった普通を生きてる人達が勝手に決めたことだということにも。
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