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「ジョリー。着替えはあるのかい?」
「あ、はい。何枚か持ってます」
「服は?」
「もう、一着あります」
急いで部屋のリュックサックから取り出すと、でんこさんに見せる。
寝間着にもなるしそのまま外にも出られるように、少し長めの黒いTシャツとカーキ色のカーゴパンツ。
しかし、でんこさんは目を細めながらボソリと呟く。
「ダサい」
ストレートな物言いに思わず吹き出す。
確かに、今着ているグレーのTシャツにデニムという格好も旅行にはラフすぎる。
そもそも、普段着にしてもお洒落とはいえない質素な格好だ。
「でも、着ている本人の気持ちが重要だからね。服なんて人様に見せる為じゃない。自分の為に着るんだから」
一瞬、フォローされたのかと思ったけれどでんこさんは私の服装を否定したわけではない。
あれは純粋に服の感想を言っただけ。だからこれはフォローではなくポリシー。私も同感だ。
「ですよね」
「そうだよ。付いておいで」
立ち上がるとでんこさんは、キッチンの横にある扉を開ける。そこは脱衣場になっていて、奥が風呂場だった。
髪をふんわりとさせるシャンプーとリンス。良い香りがするボディーソープ。
リンスは使わずメンソール入りのメンズシャンプーと、特売のメンソールボディーソープを愛用する私より女子力を感じる。
冬なら湯を張るらしいけれど、シャワー派の私には不便はない。湯船に浸かるのは疲れるし、浸かるぐらいなら風呂には入らないぐらいだ。
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