プロローグ

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 __三日前。  私はいつものようにつまらない日常を送っていた。  朝八時に起き顔を洗い歯を磨き、リビングにいる母と挨拶を交わし二階の自室に戻る。カーテンも開けずに薄暗い部屋でベッドに寝転びながらスマホをいじって、いつしか昼になっては自分のお腹の音を合図にリビングで最近のブームである菓子パンを頬張りながらミルクティーを飲み欲す。  一度ハマると同じ物を食べ続ける私に諦めたのか、母はもう何も言ってはこない。幼い頃なら、食育の面で指導されるに違いないがもう私も二十五歳。  好き勝手にやっていた。  部屋に戻ると眠気に促されるまま昼寝をして、喉の乾きを覚えて目覚めるとリビングにはいつの間にか仕事から帰って来た父と母が夕食のカレーを食べていた。  匂いにつられお腹が鳴ったけれど我慢。何故なら食べることだけが幸せだと思わせる為に、一日一食を徹底しそれ以上を望まないように自分をコントロールしている。と、いう実に面倒な理由から。  もっとこうなりたい。こうしたい。ああなりたい。ああしたい。  望むことが必ずしもできることとイコールではない。  そう気づいた私は、自分に苦痛を与えることで今ある幸せだけで充分だと自分に覚えさせる苦行をかれこれ八年は続けている。  こんな面倒なことをしないとならないのは、この頭の特性のせい。想像力だけは豊かで、あれやこれやと考えるくせに身体はおいつかない。  正直、こんな自分が面倒だった。もっと自然に生きられたら。もっと普通になれたら。  それこそ考えてもしょうがない。  __こんな自分が嫌なら、自分で終わらせるしかない。
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