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「怒らないの?」
ゆっくりと走り出す車の中でおずおずと尋ねると、ハンドルを握りながら真澄君がこちらを見る。
気にしないマインドを持ったけれど、本人を目の前にすると罪悪感が生まれ相手の気持ちを確認したくなってしまう。
「怒る? 何が?」
「……いつも、待たせてるから」
「別に待ち合せの時間を決めてるわけじゃないしな。そんなに気にすることじゃねーよ」と、本当に何ともない顔をしていてホッとする。
正直、この性質のせいで破談した関係も沢山あったから。
__本当は私と遊ぶ気なんてないんでしょ。友達だと思ってたのに。
__本当は俺のことなんて好きじゃないんだろ。こっちは楽しみにしてたのに。
遅刻癖。怠け癖。
他人に色々と言われてきた。
だからと言って努力してこなかったわけではない。
いつもより早く寝ようと試みたり目覚まし時計を四個並べてみたり。
しかし、努力すればする程に周りが普通にできることを普通にできない自分に傷ついていく。
それだけじゃなく、どんどんできないことが浮き彫りになり自己嫌悪に陥った。
精神は不安定になり、脳がマイナスなことばかり考え疲労していった。
普通とか普通じゃないとか意識したくないのに、できないことを見つけると普通じゃない自分に幻滅した。疲れた。
努力しないと普通に近づけない。毎日毎日努力しないとできない。
他の人よりも気力を使い体力を使い、やっと普通を装って感じたのは幸せじゃない。
心が壊れていく不思議な感覚。
__消えたい。
バラバラに壊れた自分をどこかに隠したくて、誰にも見られたくなくて。なのにバラバラになっても、自分を切り離すことはできない。
どこまで付き合っていかないとならない。
__疲れた。
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